アンコール・ワット

スールヤヴァルマン二世が、自らの権威の象徴として造営した、アンコール史上最大で最も高い尖塔をもつ大伽藍がアンコール・ワットである。
この寺院は、プランニングから立面造形、高さ構成のバランスなど完璧なつくりになっている。早朝には、緋色の朝陽を背に受け、大伽藍が浮かび上がり、午後になると熱帯の陽射しを浴びながら金属的に陰影をつける。陽が傾くと西日を受けて大尖塔と正面回廊が黄金色に輝く。やがて夜の闇に大尖塔の稜線がシルエットと化す。再び朝になると、前に佇む聖池の水面には大尖塔が逆さ富士のように映し出される。この大道具は見事としか云えない。
参道が終わるところで前方のテラスによって視界が遮られ、目の前から大尖塔が消える。階段を上がると、再び大尖塔が「塔頂部から」姿を現す。こうした視覚トリックは、「目の前にあるが手の届かない神の国」という異次元をつくり出し、「設計されている」という手応えを感じさせる。そして十字型テラスにたどり着くと第一回廊に刻まれたギャラリー(浮き彫り彫刻)が見えてくる。2m程の高さで200mに及ぶ帯状の彫刻が、寺院の東西南北に展開している。こうした立体的構成は、宇宙界を地上に再現しようとした独特の発想及び、崇高なる信仰がなすもので、今日でも多くの人々の心を捉えている。
(この舞台は生を観てほしい。(ぽにょ