2010-03-01から1ヶ月間の記事一覧

免除された建築家

西洋では古より、建造物をつくるのに石を使ってきました。もちろんそれは石を産出する土地であったからです。ヨーロッパの街並みは石で埋め尽くされています。荘厳な大聖堂から城郭、教会や住まい。建物はもちろんのこと道路、橋、水道などのインフラも全て…

根拠のない高さ

建築基準法では、高さ31mを超える建築物は「保有水平耐力計算」や「限界耐力計算」(なにやら難しい名称だが)などの国土交通大臣の定める基準に従った構造計算で安全を確かめなければならない。となっていることや、高さ31mを超える部分を有するものにあ…

領土のない国家

面積のない国があるんですね。マルタ騎士団といって11世紀にパレスチナ(エルサレム)に発祥した病院を守るボランティア騎士団体で、当時はホスピタル騎士団と呼ばれていました。やがてイスラーム勢力に対する軍事色を強め、その病院の守護聖人が洗礼者ヨハ…

母国のない言葉

エスペラントという「語」がある。スペルの見た目や響きが、イタリア語、スペイン語、フランス語、ドイツ語をミックスしたようで、発音は日本語のローマ字発音という不思議な言語である。世界で100万人程が使用していると云われる言葉で、「国際語(中国では…

階段のない神殿

ギリシア・ローマ時代の建築は階段状になった基壇の上に造られることが多かった。こうした様式は建物を地表面から一段高いところに建て、「高みの景観」をつくり出すことにあるが、それ以前に、階段は天界への架け橋の象徴であり、異なった高みの世界の間を…

二重折り返し階段

二重螺旋階段は、半周分ずれた位置から二つの階段が染色体のモデルのように同じシリンダー内を登る階段で、二つの階段は当然のごとく交わることはないものとして、デザインのためのみのようにつくられた、実用性は「入る人と出る人が顔を会わせたくない怪し…

名前のないバルコニー

建物に付属する部位の名称はあいまいに名乗っている例が多い。 地面から近いところから云うと、日本語の「犬走り」これは基礎を土の湿気から守る役割で、コンクリートの基礎となってからは、基礎の汚れ防止にと用途を変えている。建物周囲を舗装したものです…

グラフィックデザイン

彼岸も明けましたが冷たい雨ですね。今日はアオイからの報告です。 設計事務所とはカタカナに変えればデザイン事務所なので、かたい仕事ばかりではなく、装丁や挿絵などのグラフィックの仕事も行っています。名刺などよく頼まれますが、今回は「お品書き」で…

英国のスター

地名には都市の成立過程や、存在した施設などを推測することができる。英国によくある「マンチェスター」や「ウィンチェスター」などの「チェスター」、「カスター」、「セスター」といった語尾は、ラテン語の「軍団所在地」を意味する「カストゥルム(castru…

ウインドウ

窓は建物の壁にあけた穴(開口部)で、建築の設計ではその配置が外観の出来を左右する重要な要素である。西洋建築では、もともとは外気の取り入れ口を意味し、文字通りウィンド(風)を入れて室内を快適にする目的から「ウインドウ」という呼び名が派生した…

ハーフ・ティンバー

英国の田園住宅のイメージは「白と黒のしましま」で幽霊屋敷のモデルのようだが、これは「ハーフ・ティンバー」と呼ばれるスタイルの住まいである。(住人とすれば笑顔の老夫婦がよく似合う。 ハーフ・ティンバーとは、読んで字のごとく「半分」の「木材」と…

MI6ビル

テムズ川南岸のヴォクソールに、アール・デコ風の一際目を引く「階段状に連なった要塞建築」がある。 英国情報局秘密情報部の本部ビル(通称MI6)である。諜報部の本部だけあって銃弾はもとより、爆弾でも破壊できないような堅牢なつくりで、ハッカーによ…

2×4

19世紀半ばのアメリカで、柱と梁を組む従来の木造軸組み方式に代わる新方式が登場する。細い木材を一列に格子のように並べて壁枠とし、これを四面に立てて緊結すると虫かごのようになり、材そのものは弱くても全体としては粘り強い構造ができる。風船の形状…

コンクリート

コンクリートとは、セメントに砂、砂利(小石又は砕石)を混ぜ水で結合させ「固まったもの」のことである。ゆえに基礎や土間などの構造物になったものは「コンクリート」であって、「セメント」ではない。(セメントとしては普段目にすることはほとんどない…

たどりつけない階段

マラパルテ邸 カプリ島東部のマッスーロ岬の尾根の上に、奇妙な館が建っている。 この建物は、風変わりなジャーナリスト、クルッツィオ・マラパルテの別荘で、単純な幾何学的形状だが、「反リゾート」を具現化した、住まいとして成り立たない配置状況が「謎…

ローマのピラミッド

ローマ市のサン・パオロ広場に突如現る四角錐。 ピラミッドというよりオベリスクの先端のような鋭い「三角」である。ローマ時代につくられたというこのピラミッド、時代にそぐわないほど整った形をしている。15世紀にはすでに重要な古代の記念碑として評価さ…

グエル公園の大階段

名階段散歩 スペイン・バルセロナ「云わずと知れたガウディの建築」。この大階段、あのローマの休日の「スペイン階段」をにおわせる滝のような「上から水を流したくなる」瑞々しい階段です。 正面高台の上には、ギリシア神殿風な極太なオーダーがそびえ建ち…

登場人物

執筆者一覧及び取扱説明 今日はこのブログを書いている人物の所属を明らかにしたいと思います。 (理解し難い記事が少なからずアップされているとのご指摘を頂きましたので・・・) 桜井京介:本ブログの主執筆者 AZUSA:桜井が所属する研究室の助手(私) …

特殊な国

そのインドだが、言葉も地球を小さくしたようである。そもそも「インド語」というものがない。紙幣をみても15種類の表記がある。インドは移動する先々で言葉が変わるのである。(もちろん聞き分けなどできないのだが・・・、)いったいインドにはいくつの言…

人間の森

インド人と一口に云っても、行き交う人々の顔色容姿、服装の多様さ、皮膚の色の複雑さ、真っ白から真っ黒まで、チベットからアフリカまで、とでも云えばよいのか、ギリシアから中国まで、あるいは日本からローマまで、それともモスコウからからインドネシア…

人間は弱いもの

インドに行ったとき、黒いベールで頭を覆った、というより全身すっぽり真っ黒。アバーヤと呼ばれる黒装束の女性たちを見かけた。何か密教のような怪しい姿だが、これがフツーのムスリムの女性らしい。神秘的な優雅さを感じる一方、「女は外へ出るな、家でお…

樋と雪

昨日から降り出した雪は、目覚めと共にマグネシウムのような光りを届けた。 すでに季節はずれとなりつつある雪だが、シーズン一の大雪であった。360度真っ白。遠くの山々も雪国でしか見られない銀色を帯びたシベリアのような連なりが霞んでいる。屋根からズ…

心ある人

イスラームの言葉に「ラーハ」があるが、日本語に訳し難い言葉だ。しいていえば「休息」や「安息」にあたるだろうか。しかし労働したから休むとか、疲れたから休息するといった受動的なニュアンスではない。むしろラーハを持つために労働するといった能動的…

大日本帝国

矛盾している平等教育 先日の新聞記事にあったが、日本は平等・仲良し教育をしている一方で「金を取れ」と「突出」をおしつける。 「No.1にならなくてもいい〜」という曲がヒットするのは国民性とも云えるが、日本の教育には「全員No.2(はみ出しのない)」…

神の意志あらば

日本人はイエス・ノーをはっきり言わないと云われますが、イスラームの人々のイエスも似たようなあいまいで、しかもたいへん響きのよい言葉が使われます。 例えば、「では明日の10時に」という「約束事」に対して、彼らは「イン・シャー・アッラー!(神の意…

ミケランジェロの誕生日

ミケランジェロ(〜・ディ・ロドヴィコ・ブオナローティ・シモーニ)は1475年3月6日、トスカーナ地方のアレッツォ近郊の町カプレーゼで生まれた。(フィレンツェ人である) 13歳のとき、当時フィレンツェで最も成功していた画家ギルランダイオの弟子となり、…

利再狂は裏債来る

2リットルのペットボトルを処分場に廃棄する場合、1本あたり74円の処分費(回収・運搬)がかかるという試算があります。この試算が妥当だとすると、現在198円で売っているペットボトル入りの水を企業は処分費用まで含めて272円で販売し、74円は処理費として…

地球温暖「可」

「地球の温暖化を止めるためにCo2を削減しよう」はいまや常識中の常識ですが・・・、しかし本当にCo2の削減が温暖化を防げるのでしょうか? たしかに地球が暖かくなっていることや、Co2が増加していることは事実のようです。調査記録によれば1960年から2005…

続続カラヴァッジョ

カラヴァッジョのリアリズムな作品でやはり有名なのは『ホロフェルネスの首を切るユディト』(ローマ国立古代美術館蔵)ではないだろうか。同主題が多数存在する作品だが、通常この主題の扱いは、ユダヤのヒロインであるユディトが自ら切り取った敵将の首を…

続カラヴァッジョ

カラヴァッジョの挑発的とも云えるリアリズムの追求に一つの有名な作品がある。『聖母の死』(亡くなった聖母を前に大勢の師弟が悲しみ嘆く構成)(ルーヴル美術館蔵)だが、カラヴァッジョはこの巨大な祭壇画を、サンタ・マリア・デラ・スカラ聖堂のために…