続カラヴァッジョ

カラヴァッジョの挑発的とも云えるリアリズムの追求に一つの有名な作品がある。『聖母の死』(亡くなった聖母を前に大勢の師弟が悲しみ嘆く構成)(ルーヴル美術館蔵)だが、カラヴァッジョはこの巨大な祭壇画を、サンタ・マリア・デラ・スカラ聖堂のために描いた。その威厳と途方もない迫真性にも関わらず。絵は品位に欠けるとの理由で発注者である教会側に受け取りを拒否された。「身体は膨れ上がり、足は布で覆われていない」という聖母に対する敬意のない表現と、娼婦をモデルにしたと噂されたためであるが、じつはデッサンの苦手だったカラヴァッジョゆえの「技法」にあった。彼は目の前のモデルでなければ絵が描けず、それを出来るだけ正確に描写することにより、超写実的な表現を備えていたのだ。「聖母の死」も「本物」を表現するため、膨れ上がった遺体をモデルにしている。浮いたように布のはだけた棒のような足は、死後硬直の表れであり、顔のむくみも死相ならではである。この「本物」に隷属するあまり彼のリアリズムは、卑俗、粗野、そして挑発的であり、品位、優雅さ、美しさに欠けると、「固定された美意識者」に悪評されてしまった。
(たしかに主題が聖母であるので、おばさんのような姿は失礼ながら、信者でなくても「言い分」は分かります。女神様は美しくなくてはなりません。
 明暗法はすばらしく、最も手前で嘆く女性はまるでコラージュのようである。