たどりつけない階段

マラパルテ邸

カプリ島東部のマッスーロ岬の尾根の上に、奇妙な館が建っている。
この建物は、風変わりなジャーナリスト、クルッツィオ・マラパルテの別荘で、単純な幾何学的形状だが、「反リゾート」を具現化した、住まいとして成り立たない配置状況が「謎めいたランドマーク」となっている。
絶壁の上に建つ、赤いスタッコを吹き付けた石造りの建物は、大きなブロックを一つ置いただけのような姿。屋上からはサレルノ湾が一望できる。屋根の片側は、地上から段々と広がり続く「階段」となっていて、ピラミッドを横倒しにしたようなものが付属している。遠目には屋根の水平部分しか見えず、海を客席にした舞台装置のような演出が感じられる。段板を飾るレンガがファシスト的な雰囲気に光り、修道院の遺跡のようでもある。断崖の「頂き的姿」は、孤高なロケーションを魅力的につくりだしている。
マラパルテ邸は、たどり着くのが困難なことでも知られている。近くの町から私有地を通り抜けて2時間近く歩くか、穏やかな日は海上から入るこの建物は、デザインと場所、所有者の好みの特異性のおかげで「隠れ家」ではなくなってしまっている。
(だれか僕の代わりに見て来てくれない?