根拠のない高さ

建築基準法では、高さ31mを超える建築物は「保有水平耐力計算」や「限界耐力計算」(なにやら難しい名称だが)などの国土交通大臣の定める基準に従った構造計算で安全を確かめなければならない。となっていることや、高さ31mを超える部分を有するものにあっては、その部分から隣地境界線までの水平距離に応じて斜線制限(高さ制限)がかかることになっています。
ではこの高さの「線引き(境界決め)」となった「31m」には根拠があるのでしょうか。じつは昔の法律では、高さ百尺以上の建物は建ててはいけないことになっていました。しかしこれも根拠はなく、単に「百尺」という「とんでもない高さ」は危険なので造らないほうが良いと考えていた訳です。この百尺がすなわち30.3mなので、これを超えるものとしてキリ良く31mという数字になったようです。もちろんどの分野でも基準というものは必要で、どこかで線引きをしなければなりませんが、31m付近から危なくなるという物理的な根拠ではなさそうです。
ただその昔、明治23年に浅草に建てられた「稜雲閣十二階」という当時では超高層ビルのような、高さ62mの塔建築がありましたが、関東大震災で中央上部よりポッキリ倒壊しています。この記憶から安全率をみて、半分の高さが安全性の境界線と考えたという見方もあったようですが・・・・、
(昔の人からすれば「百尺の大台」は未知の世界だったんでしょうね。