山梨県庁舎

ニ・ニ六事件をテーマにした映画に「動乱」(1980年/東映/当然当時見た訳ではない)があるが、映画の中に陸軍省の建物が何度も登場して、映画の構成に重要な役割を果たしている。実はこの建物、山梨県庁舎が陸軍省に見たてられ撮影されたものである。撮影スタッフが、なんとかして当時の面影を残す建物をと苦労して探し回ったらしい。建物の仕上げは、正面腰部は塩山産の花崗岩、腰上は愛知県産の特殊タイル貼りで、軒廻りには濃緑色の陶瓦(とうが)が配置されている。(瓦の青みどりが決め手だな、
昭和5年の築で、間違いなく国家改造只中の事件の出演に相応しいものである。同期の建物に、神奈川県庁舎、茨城県庁舎などもあるが、いずれもがちんこな軍国主義スタイルで、戦前というか、皇軍一色な時代である。特にこの山梨県庁舎は「陸軍色」であり、カーキ色のりりしい青年将校と見事な配色であった。
建築様式は、東洋味を加えた近世式と云われ、華麗さの中にも日本建築の持つ温かみがあり、まさに昭和の名建築に値する建物である。
(事件は結局、北一輝〔主著:日本改造法案大綱〕が首謀者として処刑されている。北は事件の首謀者でもなければ、謀議に加わったこともない。陸軍は、その将兵が引き起こした不祥事の責任を回避し、民間人である北に転嫁した。これは一種の政治的謀殺であり、日本史上の大きな汚点である。(四日間の冬が終わったね、