裸足の領域

日本の住宅は戦後を境に国際的になって行き、今や建築やインテリア雑誌の写真の空間は「外国の家」と何ら変わりないように見える。しかし、そのような住宅でも図面をよく見ると、欧米の家にはなくて日本でしか見られない「つくり(納まり)」に出会うことになる。
「日本の住宅で最も日本的なつくりは何ですか」という質問を外国人(欧米人)に向けると、ほとんどが「玄関にある下駄箱です」と答えるという。(床の間や障子ではない)やはり、伝統的な和風建築も、現代の文化住宅も全て「玄関で靴をぬいで上がる空間」であることには変わらず、下駄箱という欧米人から見れば奇妙な箱の存在が「日本の家」なのである。欧米の一般的な生活習慣からいえば、外から帰ったら靴のまま寝室か衣裳部屋へ入り、そこで室内履きに替えるのが普通であるから、下駄箱や上り框(かまち)といった、ここから先は「土足厳禁」という空間的暗示は非常に奇異なものに映るのも無理はない。
現代の超モダンな家でも、日本独自のインテリアはこの「裸足の領域」を示すつくりであり、おそらく時代が進んでもこの「つくり」は消えないであろう。(バリアフリーで段差はなくなってきたが)湿度の高いこの国では、足のムレは避けがたいし、夏の素足のさわやかさへの好みは気候が変わらない限り、「モダン化」しないと云えそうである。これは日本が昔から椅子ではなく、床面に座って生活をする形式を続けてきたことが、西洋や中国とは異なる点で、「デザインの起点」がここにあると思われる。
(やはり日本は東南アジアに属していそうだ。2日は青森ねぶた祭