捨てられないドア

リニューアル工事では、新しくするために様々な古いものを「捨てる」ことになるのだが、その中でなかなか「決断」し難いものに「ドア(建具)」(以下同じ)がある。なぜドアなのかと云えば、ドアは人の出入りの際常に除けてくれる奥ゆかしい存在のもので、建築の中で唯一「動く」ものでもある。その建具枠はそもそも人の出入りする空間の「関所」であり、間から間へ移るときの「守り神」でもある。古よりその間の空間は魔物が棲みやすく、「出入りの際」に悪さをすると考えられ、これを避けるために、間の上に「神の使いとしての鳥」を意匠的に据え付け、奉ってきたようである。いわば「警備をお願いした」訳である。この「鳥に居てもらう」ことから、参道の入り口などにある囲い門を「鳥居」と呼ぶようになったとも。
建具の話に戻ると、住まいではこの鳥を日頃から食用として飼われていた「鴨(かも)」や「鴫(しぎ)」などを、業として食す代わりに神として崇め、人の通行の守り神としたのが、「鴨居」や「敷(鴫)居」となったようである。(敷居は踏まないでね
そんな訳で、長年人を見守ってきたドアを簡単には捨てられないのです。まして商業空間にあったものは、これまでお客様を迎えてきた訳ですし、まだまだ見守って頂きたいと考えるのも欲深いことではないと思います。(再利用をお勧めするのです。
(「残すデザイン」の理由の一つでもあります。