電話の多い日だ。

  • OR教の女性から仕事への励ましのお言葉と、友人へのカウンセリングのアドバイスを頂いた。
  • 住宅業務取得のため営業中のI氏より、予算は2000万しかないから平屋の34〜35坪は難しいかな?・・・千五六百で上げたいと思うなら難しいでしょうね。「ローコストなら総二階の箱ですよ!」
  • リフォーム会社M開発より、屋根を濃緑、壁をわずかに緑を含んだ白にすんだけどレンガ調のサイディングの部分はどうすんべ?(俺はコンサルティング会社か?指導フィーはいくらですか?)
  • 現場の大工より、14日に配筋検査をしてもらいたいんだけど。「14日?14日は予定入ってるので写真を撮っておいて下さい。よろしくです」
  • コピー販売店営業より、今度ホームページ作成ソフトのデモがありますが。「また今度にして下さい」
  • NTTの工事担当ですけど、パソコン等、光のご利用の予定はありますか?「今のところ大容量の仕事ないので他を当たって下さい」
  • ・・・、

インド日記つづき

2月17日 訪印の地
4時00分、目が覚める。真っ暗。隣は起きているようだがシャワーを浴びる様子もない。しばらく寝たふりをしている。(寝るのが早いからさすがに目覚めは早いな〜)そろそろ起きようと思ったら、相方がおはようと共に「停電だよ、しかもお湯も出ねーなーと思いきや、真っ暗だよ!」、「サイテー」。どうやら深夜の節電時間に当たったらしいです。「ご愁傷様」
懐中電灯が必要と聞いていたがいきなりですか。LEDの豆球の灯りで着替えやら身支度を済ませ、バルコニーへ出てみる。5時過ぎでも真っ暗です。河岸では人の動きを感じます。無音の水音も夜明けを予感させます。空気がピンと澄んでいます。暗くなにが見える訳でもないのに「ガンジスの夜明けがやって来る」一人で感慨にふけります。世界が青くなってくる。夜の終わりの色だ。
6時近くになりフロントへ下りてみるが、なんとホテルマンはゲートシャッターの前の床(外のような雰囲気)で毛布に包まり寝ているようだ。番犬かお前は!部屋はないんか!まだ起床時間ではないようです。
暗がりで待つこと五分、ゲートを叩く来訪者の声、ガイドが迎えに来たようだ。「グッモーニン!」近くに泊まる女の子二人組みと合流しガートへ。
青く白み始めた空と靄に煙る水面が静かに広がっていた。ジプシーのような毛布をまとった女性が何人かガートに腰を下ろしている。(もしかして一晩中?)壁面の照明の光がいまだ夜の空気をつくり出している。ナトリウム灯に照らされた寺院は幻想的な暖色を帯び、河を望むように空高く浮び上がっていた。
対岸の奥が赤紫色の緞帳が下りるように明るくなってきた。水面が朝焼けに染まり赤茶けた氷のように固まっている。既に舟が何艘も出ている。シルエットが夜明けのワカサギ釣り場のようであった。
僕らも舟に乗り沖へ出る。先程までの夜を忘れたかのように全ての物質が姿を現していた。
不浄の土地と呼ばれる対岸まで数メートル。僕の読んだインド「上海の西、デリーの東」の94年当時、この地には白骨死体が転がっていた。今の視界には見当たらないが死者の地であることに変りはない。近くを布に包まれた物体が浮んでいた。(子供かな・・、)
日の出の時刻が近づいていた。マニカルニカー・ガートへ向う。この地こそ訪印の一番の地であった。三島の小説がロケーションしていた死者の世界。この地で荼毘にふされ、灰は母なるガンガーへ流される。人生のラストフィナーレを演出するスタジオだ。悪臭があり、汚わいがあり、嘔吐を催すような忌まわしさに充ちた人間の肉の世界。負の世界をヴィジュアル化させた目にしてはいけなかった「果ての世界」がそこにあった。
ベナレス。神聖を極めた町は汚わいも極めた町だ。聞いた話ではこの地に着いた旅人がその吐き気を催すゴミだめのような世界に気分が悪くなり、ホテルから出ることなく地を後にしたという。三千年とも、一万年とも言われる有史来古くから存在する町だ。たくさんの人間が生まれ、たくさんの人間を葬ってきた町、何かインスパイアがあるはずだ。「行きたい!」
そんな単純な理由からだ。輪廻転生を感じ取ることが出来るかもしれない。・・・