天井とは何か

ところで天井とは何か。平面というか空間というか装置というか、この不思議な天井に昔の人は勝手な解釈を加えている。古事類苑に収録されている記述によると、「そもそも天井というものは、天に井桁を組んだものである。井桁は井戸をあらわし、井戸は水を象徴する。つまり天に井戸をかたどることによって、火災の厄除けの効果がある。」と書かれている。また別の説では、天井とは材木や竹で組んだ上に紙や布を張ったもので、別名「承塵」(しょうじん)という。つまり、小屋裏から落ちてくるちりを受けるために、天井に設けられたというのである。天井というものは、天の井戸であるにしろ、ちりを受けるものであるにしろ、原始住居が発生してから相当後の時代に、取り付けられるに至ったものといえる。
一般に茅葺きの農家では、天井を張ると屋根が腐ったり虫に喰われて傷んだりする。たしかに茅の厚い層は、もし湿度があれば妖怪ならぬ妖虫どもの這いずりまわる舞台となって、とても長持ちしそうにない。茅葺き屋根、藁葺き屋根にそっくりな堆肥の山をみても、事態は容易に想像がつく。これを防止するのが、煙の役目であった。囲炉やかまどから立ち上る煙が、さえぎるものなく小屋裏に達し、少しづつ棟の小窓から排出される。このからくりによって、小屋裏から屋根材に煙が常に侵入して、茅や藁を「くんせい」にする。くんせいにされた屋根材は、腐りもせず虫もつかないという具合になっているのである。(やはり住まいは低気密のほうが・・・、