中門は怨霊封じのためである

法隆寺の謎(10月22日参照)第三の答え

法隆寺は「偶数性の原理」が建物を支配している。
偶数性の原理に基づき中門の真ん中に柱を置き、世にも奇妙な「四間の門」を出現させた。講堂も六間(後に八間、現在は九間)、金堂の二階を四間、塔の最上層も二間とさせている。偶数で「間」をつくると建築的には大変不便である。建物の真ん中に柱があることにより、正面(中心)がとりにくく、特に寺院では本尊が真ん中に置けないことになる。このような不便さにも関わらず、法隆寺は偶数性の原理が支配的である。この執着が最も顕著に現れているのは金堂で、一階は五間であるが、二階(床はないので階とは呼べないが)は四間である。五間の上に四間を載せるなどということがあるだろうか?構造的にもはなはだ不合理である。見た目にも二階が異様に小さい。設計者はたぶん出来たら全て偶数にしたかったのだろうが、本尊を真ん中に置けないから階下だけでも奇数間にして、形だけの二階を載せ「装いを整えた」のではなかろうか。偶数性への固執が門の真ん中に柱を付けさせ、金堂の奇妙な二階となったのであろう。
参考にも他の偶数間の建物を並べてみると、出雲大社社殿、奈良元興寺の極楽坊、四天王寺及び山田寺の講堂などがある。これらに共通するのは怨霊を弔う社寺であることだ。東洋において偶数は陰の数であり、死の数なのである。偶数性の建物とは正面のない建物、いわば子孫断絶の建物である。真ん中の柱はまさしく「通せん坊」であり、出入り口ではないのだ。ここに太子の霊を閉じ込め、怒れる霊の鎮魂をこの寺において行おうとする「つくり手側」の強い意志を現した「戸締り」の建築である。