ルーブルの中の螺旋階段

名階段散歩

ご存知、ルーブル美術館の中庭、ナポレオン広場の中央にガラスのピラミッドがある。じつはこれが美術館の玄関なのだが、入ると直ぐ地下へと広がる大アトリウムが迎える。このエントランスへ降りる階段が「螺旋階段」となっている。中心を開けてスマートに螺旋を描き、階段というより「段付きのスロープ」といったくらいに緩やかなデザインである。この螺旋階段は親柱(中心軸)のない螺旋材(桁)のみで出来た純粋な渦巻き形態である。一周半程で降りるのだが、ガラスの大空間の中にあり、手摺りもガラスのため、屋外階段のような開放感はそのまま「浮遊感」となって、必然と途中で立ち止まりたくなるのだ。またこの階段が「動いている」ように感じるのは、じつは本来親柱のある中央空間部に、突如エレベーターが「現れる」のである。手摺り囲いのみの屋根のないプラットホームが油圧により上下する(バブル期以前の派手婚などで良く見かけたゴンドラステージみたいなやつ)タイプ。この巨大な円柱がせり上がってくるのである。突然「親柱付きの螺旋階段」に変身してしまうというサプライズのような階段である。(このエレベーターに乗りたくて来館する方も多いらしい)
しかしこの螺旋階段は、この「エレベーターのない時」が美しいのである。ミケランジェロを思わす優美な段状の「マーブル」が、美術品として展示されたような構造物で、まさに「ルーブル」のための階段である。