怪異な棲まい

24日はマドモワゼル・アガサではなく、ムシュー・イザヒトと「解読」をしてました。
三津田信三の「ホラー作家の棲む家」。タイトルは少々直訳的過ぎるが、「中身」は意外というかかなり異色である。ある意味「洋館もの」だが、分類では「ホラー」に属する。作中作形式で「物語り」と「作中小説」が繰り返されるいわゆる叙述トリックものであるが、トリックというより「勝手に書かれた」ドッペルゲンガーのような、そもそもミステリでもない、著者自身が語る「著者自身の記録」というドキュメント小説となっている。結果的に「あれっ?これは物語りだったの?」と思わせる、ほとんど初めて体験する「記述(ライティング)」である。英国で起きた「館」を舞台にした陰惨な事件を背景に「編集」が進んで行くのだが、はたしてこれはフィクションなのか?
ここに登場する洋館は「木造」である。ハーフ・ティンバーと呼ばれる梁(はり)や桁(けた)を露出させた形式で、英国北部やウェールズ地方に多く見られる。特に意匠的に飾ったものは俗に「幽霊屋敷」風でもある。このスタイルは日本にも多く輸入され、旧徳川義親邸(現八ヶ岳高原ヒュッテ)などは程よく「事件的な姿」を遺している。過去ドラマに使用され、陣内扮する明智小五郎シリーズ「暗黒星」の舞台にもなっている。僕もこの館には魅せられてしまい、絵に描いてしまった程である。
(暗黒星と云えば、モーツァルト魔笛」のハイソプラノが聴こえてくる・・・。