摩天楼の怪段

年も押し迫りましたが、また階段の思い出話でもしましょう。
初めて海外へ赴くことになったのは、最初の職場での「建築士会の研修旅行」でした。渡航先はニューヨーク。「建築家を育てる研修に相応しい?」と思われる、最先端の建築ツアーとなった訳です。エンパイア・ステートビル、クライスラー・ビルパンナム・ビル、WTC等の摩天楼を見上げる中、もちろん「自由の女神」も螺旋階段を登り、トゲトゲの冠の中からマンハッタンの海を眺めました。ところが、変に記憶に残っているのが「ホテルの階段」でした。

迷階段散歩

それは宿泊することとなったパラマウント・ホテルのロビーにある階段なのだが・・・、
ブロードウェイの中心という恵まれた環境にも関わらず、存続の危機に瀕していたそのホテル。1990年、フランスのデザイナー、フィリップ・スタルクの手により全面リニューアルが行われ、新しくなったホテルは、豪華客船のような優雅で色彩豊かな雰囲気のロビーが迎えている。現代アート風なデザイナーの調度品が並び、フロアー一面に広がる市松模様の絨毯の上に「オブジェ」のように「一つの物体として」配置された怪しい階段がある。「それ」はグランドフロアーとその上のレストラン、ラウンジ、バーをつないでいるのだが、映画のセットのように大きく、段は手前が狭く、上に上るに従って広くなっている。(どちらかというと上り専用のような)それ自体が彫刻のようで「黒い岩」のようでもある。「彼」はスポットライトを浴び、ロビーの主役を演じていた。このミニマルな「幾何学物」はスタルクの有機的フォルムに対する偏愛を示しているのか、(意味分からん・・・、
初めての外国を味わうには、いささかデザインが過ぎた感のある建築でした。