インドの河の話

インド亜大陸を潤す二大河のうち、インダス河はヒマラヤから西へ下り、パキスタンをへてアラビア海へと流れる。もうひとつのガンジス河はヒマラヤから東へ下り、ベンガル湾へと注ぐ。このガンジス河の中流域の大平原に広がる大きな州が、ウッタル・プラデシュ州であって、この州はガンジスの恵みと切り離すことが出来ない。河水の灌漑により、パンジャーブ州と並ぶ穀倉地帯を形成して、インドで最も多くの人口をかかえている。
ガンジス河というのは英語名称であって、正式には「ガンガー」と云う。水の不足するインドにあって河川は神聖視され、信仰の対象にされるが、なかでもガンガーは、インド人にとって最も聖なる河である。インドの創世神話にも登場し、天上の河が地上に下ってガンガーになったという。これを象徴するのが、聖なるガンガーのほとりのバナーラス(ヴァラナシ)の町であり、三島由紀夫の小説「豊饒の海暁の寺)」に描かれたベナレスに他ならない。ヒンドゥー教徒は、死ぬまでに一度はバナーラスを訪れ、聖なる河で沐浴をし、聖なる水を飲みたいと願うのである。(最上の願いはここで亡くなり、灰を母なるガンガーへ流されることである。
バナーラスの上流で、ガンガーは二本に分かれ、南側の支流ヤムナー河は古都アーグラを貫き、デリーへと遡る。この二本の聖河ガンガーとヤムナーは神格化されて、女神の姿に描かれる。ヒンドゥー寺院の入口や聖室前の扉口の左右には、これら二体の神像がしばしば優美に彫刻されているのが見られる。
(またインド熱が出てきたか・・・、来月で一年になるんですね。