乱れからくり

古い作品だがようやく・・・、
ある作家による「好きなミステリベスト3」に入るとの書評を知り、ミーハー的に手に入れてしまったもの。タイトル通り、日本文化の一つである「からくり」を「技術」として用いた歴史ミステリである。舞台設定はからくり職人が残した「館」で起きる連続殺人事件であるが、この作品「犯人設定」としてはかなり異色である。プロパヴィリティの犯罪ともいえるオートマティックな実行犯なのである。(際どいネタばらし)しかし、屋敷前に広がる「迷路庭園」やその迷路に秘密(しかけ)がある(たいていのミステリの館は「つながっている」)などは以前読んだ作品(風果つる館の殺人)とダブるのだが、執筆はこちらの方がはるかに古いので、迷路についてはこちらが原作(?)と云ってもよいであろうか。「からくり」を使った不可思議な犯行はやがて、その不可解さゆえ犯人像を絞り始める。からくりとは「絡繰、機巧、璣」と書き、「機械仕掛け」のことであり、日本独自の技術としてアニメやフィギュア(食品サンプル)等の先駆けとして海外へも輸出していたものの一つで、単に「おもちゃ」とは云えないハイテクな玩具であった。そのミステリアスな動きから「ミステリ」のトリックにも多用され、マジック好きの柄刀一芦辺拓なども好んで読んでいたに違いない。そもそも著者名「泡坂妻夫」でさえ奇術師「厚川昌男」のアナグラムというところからカラクリである。