スタイルズ荘の怪事件

ただタイトル(〜館というだけ)に引かれ、いつの頃か分からぬ程前の入手だが、読み出す度に多人称の会話形式が物語への誘いを阻止し、翻訳ものが苦手だったこともあり、何度となく中途挫折してしまった作品。
・・・ようやく。(・・・、)
ここに登場するスタイルズ荘。欧州の邸宅建築のスタンダードと呼べる廊下を中庭に面して外側に部屋を並べただけの「コの字」プランで、中世の城郭建築の特徴でもある「つなぎ部屋」形式もしっかり継承している。(ようは当時のフツーの館モノである)このスタイル最大の建築は、ウッフィツィ美術館かな。(元役所=オフィスの語源)
デビュー作は注ぎ込みましたね。現場には「怪人(関係者)」を多数登場させ、後の「オリエント急行」を匂わす複数の手が加わることで、「真の姿」を隠してしまっている複雑な構成。不確定性原理を推測する程には「読解力」が遠く及ばず、これを棚に上げるなら、他のメジャーな作品に比べ地味さは否めない。やはり物語のイメージは序盤のつくりで全体の予測がつくというのは、遠からず誤りではないようで、「とっつき(入り込み)やすさ」は「物語としての出来を左右する」一つの要素ではありそうだ。(何を書いているのか分からなくなったが、これも「文を書く」というトレーニングなんですね。
(パラッツオ・メディチの様な中庭付きの住宅が似合うな