ダーダー・ハリの階段井戸

アフマダーバード駅から北へ2km程のところにあるこの井戸は、1499年イスラーム政権の王妃、ダーダー・ハリによって造られた。幅が約6m、長さ約70m、数十段の階段を下っていくつかの踊り場を抜けて井戸に至る大建築である。深さは約20m。底まで下りると正方形の昔水槽だった穴がある。(今は水はなく土で埋められている)上を見上げると、5層からなる八角形の円筒になっており、空を望むことができる。イスラームの施設ゆえ偶像こそないが、柱の上下をつなぐ欄干部には細密な彫刻がひしめいている。この廟のような幽玄な雰囲気と、モスクのような柱に囲まれた厳粛な空間は、礼拝的な宗教施設であることは容易に想像がつく。
この「階段を下りるだけの建築」の何処に引かれるのか解らない・・・。
何度も上り下りを繰り返すうち閃いたものがある。・・・これは「水の神」を祀る神殿なのか?(それはそうなのだが)地上部分を境に鏡面反転させてみれば・・・「階段部分を天井に持つ」巨大神殿になるのではないか!これは地下に再現された逆転建築であり、反転させれば「底の水が落ちてくる」すなわち「天から雨が降ってくる」ということにならないか!(この時そう思えた)
階段井戸とは雨の少ない土地に水を貯める施設を造ることにより、降雨を願ったのではないだろうか・・・。
(そもそも500年以上も昔の建築にふらっと立ち寄れること自体、驚愕であった。