ルダの階段井戸

アフマダーバードから北へ20km弱、アダーラジという小さな村に地下建築としての空間と、彫刻の完成度の高さから云っても最上級の井戸がある。土圧を支えるための柱・梁の架構は、底へ下りて行くほど森のような雰囲気になり、そのモザイク的な彫刻の密度は宮殿を思わせる。ヒンドゥーのヴァーゲラー朝の王妃、ルダによって造られたもので、ダーダー・ハリの階段井戸と同期のものであり共通点も多い。一番異なるのはダーダー・ハリが一直線の階段に対して、こちらは三方からの階段が一度広い踊り場で集まり、そこから井戸底に下りて行くことにある。広場は2本ずつ四方の柱に囲まれ、屋根スラブの中央は八角形に大きく空いている。その上部には八角形のドラム(立上がり)が載り、かつてはドーム屋根がかかっていたと思われる。ヒンドゥーの施設であるが、イスラーム勢力圏のため神像は少ないものの、彫刻はその融合とも云え、バロック的でもある。この施設全体が偶像のような階段井戸は単なる実用目的だけではなく、宗教儀式にも用いられたはずであるから、階段に囲まれた広場は観覧席を備えたステージとして造られたものに違いない。(大きな階段池はスタジアムにみえる
井戸という施設にこれだけの技術を注ぎ込む意図は何なのか・・・。
ただ水平方向と垂直方向に連続する構造体のみの建築が「純粋な美しさ」をつくっていた。
(ここでも頭を逆さにして眺めてみると、やはりなぜか彫刻や柱の形が「本来の姿」に見えてくるのだった。