「家相」

家づくりに「家相」というものが出てくることがあるが、その手の書には家相がなぜ人の運命を規定するのかについてや、因果について明らかにしているものは見当たらない。これは大陸から伝わり聞いた(見た者がいない)という根拠のない逸話を勝手に解釈したものであるからだ。占いにしても的中したように見える事象だけを呈して、因果のあるように云うが、あくまでも偶然にすぎない。占いにひかれる人は、根拠があるから信じる訳ではなく、それが当るように見えるから頼ろうとする。いわば根拠があろうがなかろうがそれは関係ないのである。しかし、生活の根幹を成す大切な住まいの設計が左右されるのでは、あまりに損失が大きい。
住まいのプランと住み手の運命との間に全く相関がないとは云えないと思うが、よい住まいとは「住み手」が住みやすく、「いい家だ」と思う家が一番で、「家相」で決めているような根拠のない「方向」や「方位」といった、絵にかいた分割図などで決められるものではない。同じプランでも住み手の使い方により吉にも凶にもなる訳で、他人の家に口を出すのは、土足で踏み込む内政干渉に他ならない。
家相家は改善策を指摘できないと商売にならないので、怖がらせるネタ(ダメだし)ばかりを用意している。このような家相商売は、悩みも持つ人の弱みに付け込んだ振り込み詐欺と変わらない卑劣なものと云わざるを得ない。
NPO法人 家相に頼らない家づくりを進める建築士事務所連絡会)