「鬼門」

「家の間取りの話」の際、耳にする言葉だが、もともとは陰陽道(おんみょうどう)で鬼が出入りする方角として忌み嫌う方向で、東北すなわち丑寅(うしとら)の方向を云い、南西方向は裏鬼門と称して同じように嫌らわれるが、
このネタの根拠は、中国の古伝説の鬼(き)と鬼(おに)の取り違えから来ているらしい。中国の古伝説「山海経」はおとぎ話的な怪談の書物で、その中に鬼門(きもん)の話が出てくる。
〜中国の東方の海中に度朔山(たくたくさん)という山がある。その山の上に桃の大樹の東北に伸びた枝の下に、死人の霊魂が出入りする門があって、それを鬼門という〜 しかし、この話には鬼門の方向が凶方だとは書かれていない。しかも鬼(き)は死者の霊魂であって、怪物としての鬼(おに)のことではない。だが当時の中国崇拝の学者が丑寅(うしとら)方向の語呂から、ウシの角とトラの皮を付けた鬼(おに)という魔物をつくりだしてしまったのである。
どうも鬼門凶方説は一部の家相家によってつくり出された「マニフェスト」のようであるが、鬼門が忌避された理由は、鬼門というその「文字の恐ろしさ」で、この言葉だけが一人歩きし、恐ろしい鬼が出入りする位置に玄関や不浄物をつくると、鬼の怒りを買うのではないかとの勝手な解釈により、この迷信が普及してしまったのである。
家相家にとっては、世の中には「いけない方向」というものがあった方が商売になるのであるが、ただ便所に関してはこれらとは無関係に、東北方向の日照時間の少ない位置に汚物を貯めると、いつまでも乾燥せず不衛生であるから避けたほうがよいということは事実であった。(水洗となった今ではこれも昔話)
(家づくりの際は「こんな恐ろしい話」に「振り込まない」ようにしましょう。