落水荘

アメリカ、ペンシルベニア州ベア・ラン(ミル・ラン)に落水荘(Falling water)と名付けられた住宅がある。日本では旧帝国ホテル(現在、愛知県犬山市明治村に一部が移築保存されている)の設計者として有名な近代建築の巨匠の一人である、フランク・ロイド・ライトの作品だが、ピッツバーグ郊外の鬱蒼と茂る森の中の小さな滝のある、谷川の崖の上にキャンティレバー(はねだし構造)で張り出すように建っている。崖の上に住空間が配置され、川の流れの上に大小のテラスが置かれている。居間の暖炉には岩盤がそのまま露出し、屋内から「階段(上から吊られたもの)」を下りて行けば、滝の水に直接触れることもできる。この建築は「環境」を十分に生かしながら、その魅力を最大限に引き出したいわゆる「場所性」を備えたもので、有機的とも云える自然との共生住宅で、彼の最高傑作の一つである。
だがこの住宅は、家相、地相の見地からすると、池鏡(池の水の家屋が映る)、尾先(山裾の突端)、谷口(土石流域)、キャンティレバー(はね出し上の居室)といった禁忌のフルコースである。しかし、この住宅を見たら誰もがこんなところに家を建ててみたいと思うだろう。落水荘もクライアント(建て主)の理解があってこその建築である。やはり住み手が「いい家と思う家」が「よい家」なのである。
残念ながら現在ではこのような「災害危険地域」には建築許可がおりませんが・・・、
(この家は正しい意味で「落水荘」ではない。「滝の上」にあるからだ。僕が「同名の家」をつくるなら正式に「上から水の落ちる家」をデザインします。