鴨居と敷居

ご存知、日本建築における建具(引戸)のレールにあたる部分の名称だが、この「鴨居」と「敷居」、やはり八百万の神、身の回りのものを神としたわが国ならではの名である。
「鴨」はもちろんアヒルのことだが、「敷」は「鴫(しぎ)チドリ目シギ科の渡り鳥」(字も鴨と似ている)のことで、どちらも身近に飼育されていた水鳥である。
レールには溝があるが、溝は水がたまる。水は溢れると筋状になって溝を掘る。溝とは水場の例えである。鴨居は溝が深く、敷居は浅い。どちらを上にするかだが、鴨の方が親しみが強くよく働き食用にもなるので、あり難さから鴨を人の上に置き奉ったのである。ゆえに「鴨居」は鴨の居るところで、「敷居」は鴫の居るところとして、神の使いとしての鳥に居てもらう「鳥居」のごとく、日頃出入りするところに邪気が入らぬよう鳥に居て頂くことになったと考えられる。
鴫(しぎ)は音の悪さ(死を連想する)ことや、床に敷くものであることから「しきい」に変化したものと思われる。
(溝が水と思えば建具も浮力でスムーズに開閉できそうです。