たてもの園

東京都小金井市小金井公園内)に、「江戸東京たてもの園」という屋外博物館がある。東京都が1993年、江戸東京博物館の分館として建設したもので、「現地保存が不可能な文化的価値の高い歴史的建築物を移築、復元、保存し、文化遺産として次代に継承すること」を目的としたものです。
園内には、江戸〜昭和までの様々な歴史的建築物が並んでいます。建築科の学生に人気の高い、前川國男堀口捨己などの建築家の作品もあり、民家から洋館、看板建築に至るまで興味深いものばかりです。しかし、今回「僕の目当て」はそのような「建築的な視線」からではありません。昭和11年二・二六事件の「高橋蔵相暗殺」の舞台となった「高橋是清邸」です。「遭難現場」の中で、最も凄惨な姿となった「二階の寝室」に引き寄せられるように伺った。
建物は住まいとは思えぬほどの(旅館のような)豪邸である。(さすがの大臣私邸。邸内は迷路のように複雑な間取りで、(吉良邸討ち入りの如く)襲撃部隊は、しばらくは是清の寝室の所在をつかめず、手間取ったと聞く。階段は二ヶ所あり、見学通路としては上り専用となっている狭い階段(螺旋階段を上る感覚を覚える)を上がると、書斎手前へ着く。
天誅!」と叫ぶ将校らに対して、是清は「馬鹿者!」とどなり返している。その凄惨な現場は、八十三の老齢に対して不必要なまでの手(右腕は皮膚一枚でつながり、腹部は「切り裂きジャックの如く」ほぼ輪切りにされ、臓物が外へ飛び出していたと云う)を加えている。(・・・。)
「その部屋」に入ったとき、活字による映像が頭をかすめた。因縁の部屋は、和室としては天井が高く、暗鬱とした妖気が漂っている。時間の止まった未明の室内は、大工技術の粋を集めた総栂(つが)造りの重厚なる和風建築である。窓の格子組子もデザインされ、ジブリ映画「千と千尋の神隠し」に出てくる「油屋の窓」のモチーフにもなったものだ。
下り専用階段(こちらは幅がある)を下り、宿のような幾つもの部屋(襲撃時、女中などを含め計15人がいた)を周り、見学を終えた。(何を観てきたのだろうか、
(達磨さん、今の内閣も遭難しそうです。