シャガールの誕生日

メルヘンや絵本に出てくるようなフワフワした、いかにもな作風。なぜかホテルの客室の壁を飾るに相応しい絵である。
最も有名なのは『誕生日〈ニューヨーク近代美術館蔵〉』で、斜めに浮いたように描かれた二人の人物はシャガールと結婚間近の妻ベラであり、彼女が彼の誕生日に花を届けた様子を描いている。(彼女は霧の中からやってくる)
「空飛ぶ恋人たち」。彼の好んだ作品の統一テーマであり、妻との幸福な生活が、一生涯描き続けた多くの恋人たちや、花嫁の作品に表れている。
そのテーマの表現において、この絵をしのぐ作品はなく、彼は恋人ベラにキスをしようと身体を捻じり、空中にふわ〜と浮いた状態であり、「至福の時間と喜び」を表現している。(お部屋に一枚どうぞ)
彼の作品の特徴は、描く人物や物質がしっかりと大地に立っているものはほとんどなく、空間に漂うように描かれて夢のような感覚を与えていることである。空間を構成する要素に物理的条件は、彼にとって重要ではなかった。ヴァイオリン弾き、牛、花輪、蝋燭、天使など無関係と思われるものまで、上下、左右、前後、基準なく紙面を埋め尽くしている。全ての着色が幻想的で、夜空に飛ぶ恋人たちは、さながら七夕のようでもあります。
(「何かよく分からない絵」・・・これがインテリアを邪魔しないのです。