白い家

住まいの様式から「飾り気」を取り、実用性に限定したスタイルが「トラディショナル(伝統形)」である。(ようは田舎の家のこと)このようなスタイルはどの国にもあり、「素朴さ」が美しく、その地方ならではの素材や、技術によって様々な伝統スタイルをつくっている。
「素朴さ」の理由は「経済性」で、仕上げに石灰を多用しているので、たいていは「白い」。「しっくい」の原料となる石灰は、安価で取り扱いも楽である。建築材料と云えば木材が主流で、しっくいは梁と梁の間を埋めたり、梁を完全に覆ったりするのに使われる。その典型がイギリスの農家であり、イングランド地方の木骨造り(ハーフティンバーと呼ばれる:柱や梁を外面に現し、その間をしっくいで埋める建築様式)の田舎家である。
これが地中海地方に行くと、しっくいは「家全体」となり、ギリシャチュニジア、またはスペイン南部のアンダルシア地方に見られる「サイコロ」状の箱型住居で、集落全体が真っ白になっている。(リゾート地のイメージ?
アメリカに渡ると、下見板張り(羽目板を少しずつ重ねて張る工法)で、板に耐久性を持たせるために、白いペンキが厚く塗られた。白ペンキはしっくいと同じく安上がりな建築材料だった訳である。このような下見板張り(コロニアル様式とも呼ばれた)の家や、ケープコッド様式(ディズニーシーでも見られる)は、一般的に木造平屋で、急勾配の屋根が載るというシンプルなつくりで、実用性を重視した開拓者の実直さ、たくましさの表れでもある。
この飾り気(色)を取った白い家の精神は、「偽りのない誠実な心」で、そのシンプルな姿が「気まぐれな天候」から住人を守るオブジェとして、定着したのかもしれない。
(色は紫外線により白化するので、実用を考慮すれば最初から白くしておくのが合理的で、「素朴」には訳があったのだ。