アルハンブラ宮殿

スペイン、城塞都市、とくれば「アルハンブラ」である。イベリア半島最南部に唯一残ったイスラーム王国「グラナダ」。グラナダは13世紀にコルドババレンシア、セビーリャなどが次々にキリスト教国に再征服(レコンキスタ)された後も、最後までイスラーム国として二百年以上も持ちこたえてきた。その訳は「アルハンブラ宮殿」があったからである。コルドバの市街地の外れにある丘の上に、周囲をぐるりと高い城壁で囲った要塞都市がある。城壁の長さは二千メートルに及び、内部は王の宮殿部分もあるが、軍隊の駐屯地もあり、重臣の居住区や市場、モスクもある。二千人以上が住むこの都市の門を閉ざしてしまえば、容易には陥落させることが出来なかったのである。ところが、1479年にカスティーリャ王国のイザベルと、アラゴン王国の皇太子フェルディナンド二世夫妻の国が統合され、スペイン王国となることで歴史が変わることになる。両国が目指すのは、唯一残ったグラナダを陥落させ、レコンキスタを完了させることであった。(イベリア半島全てをキリスト教国に戻すことだった)
しかし、この要塞都市を落とすのは容易ではなく、攻め落とすのに11年かかったと云われている。最後は城内に食料を持ち込ませない「兵糧攻め」と、降伏しても宗教の自由と財産を保障するといった「啓蒙作戦」でついに陥落となった。(もちろんウソである。
やはりこの城の目玉は「宮殿部分」で、夏の暑さを逆手にとり、水を使った庭園は息をのむ美しさである。水面を利用した逆さ建築や、むせ返るような緑の壁は、優美を越えた「静寂な砦」と呼ぶのに相応しい。
秘密の花園と呼べるような華やかな中にも、滅びによる哀愁が漂っている。(このアルハンブラのあるアンダルシア地方こそがスペインである。