サン・クルーの夜

暗い部屋の中で、一人男が窓から月明かりの水辺を眺めている。シルエットとタバコの灯だけが、その存在を表現している。(ムンクの絵だ。
幼少期の暗い過去(母と姉を相次いで亡くしている)が、彼のその作品に、通して苦悩的な影を落としている。タイトルをみても「病める子」、「病室の死」、「臨終の部屋」、「死の島」、「骸骨の腕のある自画像」、「葬送行進曲」、「死の苦悩」、「吸血鬼」、「灰」、「メランコリー」、「叫び」、「不安」、「嫉妬」、「マラーの死」等、およそ好んで画題にされないものが多い。(どれも魔物のような黒い影が付きまとっている。
このネガティブで病的な表現は、ナチスにより「退廃的芸術」とされ、没収され売り飛ばされた経緯もある。しかし、この暗い表現の中にも、「色の線」という「優雅」とも云える技法が、心を鎮める「癒しの絵画」として捉えることも出来るのである。(じつにいい、、
「サン・クルーの夜」は、「夜の外」が「部屋の夜」より明るいことを、立体感のない表現にうまく現している。(「孤独」を描かせたら右に出るものが・・・って程。
(生誕147年。そんな夜ですね。