暗凍るの朝

バイクタクシーのドライバーと別れ、一人アンコール・ワットへ向け正面参道を歩いている。しかしなにか変なのである。世界遺産にもなっている一大観光地なのに、観光客の姿が見えない。わずかに姿があるのは、崩れた欄干に座り込む粗末な身なりの老婆や、派手な袈裟を着けた僧侶が、視線を落としたまま歩いているだけなのである。(今日は休館日か?そんなことはないと思うが、たまたま「旅行日に選ばなかった日」が偶然にも集中したのだろうか?(・・ありえない、)さらに進み西の塔門を抜けると、そこは・・・・・、「工事現場」だった。(・・・。)「サスケの会場」の如く、うず高く組まれた「足場」がアンコールワット全体を囲い、周辺にはアームを立てたレッカーや、バックホーなどの建設重機が「トミカジオラマ」のように散在しているのだった。・・・「大修復工事中?」(・・・やはり今日は休館日だったのである。同時に脳のモニターには、ラウレンツィアーナ図書館の姿がスクリーンセーバーの如く「時間がきたように」現れたのだ。以前、二度の渡航にも関わらず「門前払い」をくらったフィレンツェの苦い記憶である。
遺跡の表面のほとんどは、白い真新しい石に変わり、修復というより建て替えをした様子である。(・・・これは遺産ではない、)観光客の増大に伴い、「安全」を最優先した結果、「崩壊の危険」を取り去ってしまったということか。「歴史」より、外貨を稼ぎ出す「ドル箱」の象徴的復元を選んだのか・・・・・、しかし・・・・、観光客がいないのは、「休館日」などではなく、既に「集客力を失った姿」なのではないだろうか。どこの世界も、「永田町のやる事は国民の心と相違がある」ということか。
・・・・・・・・(夢か。・・・今日もよく眠れたのだろうか、まだ5時だ。
4日目の朝、今日は天空の楽園「アンコール・ワット」を訪問する日。5年振りの遺跡への懐古心が夢へ先回りしたのだろうか。空腹をポテト味のカロリーメイトで抑える。身体は調子よく、「大量の用足し」もあった。(失礼)シャワーを浴び、荷をパッキング。7時頃になるとホテル前にはトゥクトゥクが姿を現した。(皆仕事熱心である)約束の8時前には部屋を出て、冷たい階段を下りる。散歩から帰ってきたのか白髪のご婦人が「ボンジュー」と、すかさず僕も「チュムリアップ・スオ」と合掌。(婦人もニコニコ、挨拶は気分いいですね。
(やはり時間前からリーさんを待ちます。