今宵は・・

 研究棟の建つ構内の片隅に小さな木造家屋がひっそりと建っている。その昔ハンセン病の治療に活躍した郷土出身の小川正子女史が住んでいた家を復元したものだった。
 毎年この時期になると冬場の閉館に備え、清掃をして雨戸を閉めるのだが、戸を引き出した後二枚目が何かにつかえて出てこない。戸袋の中を見ると番いだろうか、二羽のヒヨドリが干からびた状態で横たわっていた。(・・・。)新居に良いと思って入ったのはよいが、出られなくなってしまったのだろうか。平たくなっているところを見ると、戸に挟まれたのが原因のようだった。日頃の管理の悪さを感じ、無性に申し訳ない気持ちにもなった。もちろん清掃どころではなくなり、直ぐに近くのやわらかい土の中へ葬ってあげた。手を合わせるだけで供養が出来るとは思わないが、自然な気持ちになることは出来た。また一つ大人になったのかなどと、勝手に自負している自分がいるのだった・・・。

(こんな短編を記したくなるような心境のようです。