展望する巨大団地

2DKとか2LDKのような同じ間取りを詰め込んだ過去の団地や共同住宅は、プランの性質上どうしても子供を持つ若い世代の入居が多くなり、これは同じように年をとってゆくことを意味する。この結果最終的には建物が老人ホームのようになり、即ち後の廃墟となるのだ。
しかしこの団地はその前に、子供を取り巻く環境を含め非常に「住みづらい世の中」をつくり出す。「隣りの芝生は青い(子供の成績や旦那の出世)」を毎日のように目することから、意味のない競争心が芽生え、共同公園や住まいが憩の場ではなくなってしまうことに・・。過去、富士の樹海をしのぐ自殺の名所と謳われた団地があった。下駄の足のような建物が全て南を向いて建てられ、その数六十棟余り・・帰る家すら迷ってしまうような巨大ベッドタウン。一時期この殺伐とした雰囲気に誘われるように、ここを清水の舞台にした者が続出したのである。
そんな中展望塔ではある事件が起こったのです。桜井亜美を彷彿させる衝撃的なキャストを登場させたのがこの短編。

展望塔の殺人 (光文社文庫)

展望塔の殺人 (光文社文庫)

(これも過去の書棚から・・桜井はノベルス版ですが。