三ツ矢マンション

昭和30年代から40年代初頭にかけて公団や公社などにより、団地内のポイントハウスとして造られた建物で、その三ツ矢のような星の形からスターハウスとも呼ばれた。
この建物が島田荘司氏の「北の夕鶴2/3の殺人」に登場する。霧に沈む釧路平野内の広里地区。ポツンと区画された敷地にこの建物3棟が絶妙な距離をおいて配置されている。この風変りな建物群を舞台に大掛かりなトリックが隠されていたのだが・・・。物語りも昭和40年築の設定で、全国的な流行りでもあったらしい。今ではとても良いプランとは云い難いが、哀愁が漂い退廃的で何とも憎めないデザインである。10年程の短い供給期間も手伝ってか、幻の建築としての価値を感じるのかもしれない。
建設から既に40年以上となり、現在ではその大半が解体されている(保存の決まった団地もある)が、この貴重な建物が2012年現在の山梨にも2棟残っている。貢川団地43号、45号棟である。(すでに耐震補強がなされていた)
半世紀近い時間の中で様々な事件を目撃してきたスターハウスは、優美とも見える姿だった。

(昔読んだ物語の建物が今でも存在していた事実がとても感慨深く、宝物を発見したような気分になれたのだった。

北の夕鶴2/3の殺人 (光文社文庫)

北の夕鶴2/3の殺人 (光文社文庫)