涙が流れた・・

これも過去の書棚からの再読。
「涙流れるままに」というミステリとは思えないタイトルだが、最後の最後に涙は吉敷の頬を流れて下る。しばらく自分の涙が流れるままに・・。これを読んだときミステリを読んで初めて涙を流した・・。
島田荘司ミステリ15年の歳月をかけて書き継がれてきた「吉敷竹史シリーズ」の集大成的作品。吉敷の別れた妻加納通子の波乱の半生を描いた物語。涙を流すにはシリーズを通して読んできてこそなのかもしれない。過去異常行動を繰り返してきた通子。主な原因は恐れやおぞましい体験による記憶の書き換えにあったようです。また人は極限的な恐れなどから身を守るために、記憶の伝達線ブレーカを落としてしまうことをするらしい。のちにその部分だけ記憶喪失となったり、またその逆に恐怖体験がないと平常行動が出来ないなどの障害が生じたりする。様々な要因が絡み合い、通子は女性として堕ちるところまで堕ちている・・。
冤罪事件とコラボさせ、40年という時間の流れと記憶の歴史をリンクさせた原稿用紙2000枚の感動巨編。

涙流れるままに (上) (カッパ・ノベルス)

涙流れるままに (上) (カッパ・ノベルス)

涙流れるままに (下) (カッパ・ノベルス)

涙流れるままに (下) (カッパ・ノベルス)

(流れる涙を時代の風に重ねて、終わらない貴方の吐息を感じて・・