記憶障害といえば・・

これはいったいどういう事だ!以前読んだはずなのだが、内容の記憶が全くといって欠落している。本文にも出てくるが記憶障害の一つなのだろうか。
記憶するという精神機能は、印象を記録する「記銘」、それを保存する「保持」、再び思い出す「再生(想起)」、それが印象と違わないかの確認の「再認」の四つに分類されると云われるが、このうち保持していた印象を再び意識上へ呼び戻す機能に支障が出ているので、これは「再生障害」に該当すると思われる。物語りの主人公も再生障害により、目覚めた時点以前の記憶をすっかり失ったばかりに、とんでもない出来事に巻き込まれるのだが・・。
記憶障害のミステリを読んだ記憶を忘れるとは、何やら意味深で暗示にかかったようだが、僕もそれなりの遭遇であったのだろうか。
島田荘司氏の真のデビュー作(上梓では25作目)であり、御手洗の登場と石岡和己との衝撃的な出会いを描いた作品で、過去が動いてしまう程のからくりは、構想に余念のなかった自身の若き環境が創りだした世界に、キャラクター性のある二人の騎士を登場させ、その後の新本格世界をおおいに予言している。(医学知識を持たせた御手洗は登場時から後のストックホルム時代を予感させている)

異邦の騎士

異邦の騎士

(その強烈な印象が記憶の引き出しに鍵をかけてしまったのだと・・。