読後感想文

子供の頃嫌いな宿題の一つだった。字数を稼ぐために感想の元になった本文を出来るだけ長く引用していた。当時は面白かった、つまらなかった、楽しかった、悲しくなった、感動したなどの言葉以外に何を書いてよいか分からなかったのがそもそもの感想だった。感想文に過去の記憶や、己の体験などを挿入することが比較的セオリーと知り、作文が書けるようになったのは、宿題などなくなってからのことだった。
「子どもたちは夜と遊ぶ/辻村深月」を読み終えた。大学学園内の青春小説とくくれそうだが、解離性人格障害を扱った叙述的なミステリ感に、地域のわらべ歌を裏読みした横溝的なオドロしさも少なからず備えている。ただ頁の水面下に通して潜んいるのは、女性心理というか優位性を性とする女心でしょうか。辻村氏の得意とする主題です。各キャストの心理戦も現役学生のようなリアルさがあり、学生時代の経験からくる描写が読み取れます。また、本格と云える程に十分な原稿量があり(読者によっては無駄に字数増を感じるところですが)、小分けした章がそれぞれの伏せんとなっています。初めて読んだ作家作品としては読ませてもらった感はあります。レビューには大型新人とありましたが、誇張なく熟された作品感があります。他作も期待できそうです。(マイライブラリー入りする日も近いかもしれません・・。
(ここのところノンアルコール中毒です。