銀河鉄道の夜

読書好きではあったが宮沢賢治は読んだことがなかった・・。タイトルの美しい名前だけでも惹かれる作品を、終末が来る前に読んでおこうと思った。 /「銀河鉄道の夜」/ 想像していたのは夢のあるファンタジーであったが、意外やそうではなかった。罪と罰に代表されるロシア文学的であり、磔刑されたイエス・キリストをイメージさせる含みもあり、そもそも〈父〉が北海の漁師(蟹工)というだけで、プロレタリアートを感じる作品でもあった。
象徴的次元で解読すると、世界の童話と同じような怖さを秘めた裏読みが出来るつづりで、貧困や己の病、身辺の死を体験した賢治の生への問いを読むことが出来る。
この鉄道は火車の如く死者を定められた次元へ送り届ける手段を形にしたもので、寓話的な美しさがある。特にタイタニック号での遭難者が乗り合わせるところは、事件が文学的でもあったことを象徴させている。本来長編で創られた世界の一場面をカットして上梓したところにこの作品の難しさがあり、読者に裏読みさせるところまで計算した奥の深い物語りである。
(折しも今日は999日目であった。